「危機」にしても、いまの日本ではちょっとした危機に瀕するといまにも日本が沈みそうな騒ぎ方になるが、この字をよく見れば「危」の後に「機」がついている。
この機を機会の機、危を危険の危と分けて考えれば、危機の時ほどチャンスがあるとも読めるではないか。
危機があるからチャンスもあると考えれば、災い転じて福となすこともできるだろう。
だから、いまは小さなことで大騒ぎなどするよりは、むしろ面白い時代だととらえるべきなのである。
現代の日本人にはすっかり死語となってしまった感がある「分別」という言葉にしても、そのまま読めば単なる「ブンベッ」で、それこそゴミの分別になってしまう。
「分別」とはもちろん「フンベッ」で、「分を知る」「分を弁える」といった、「衣食足りて礼節」を知っていた日本人を象徴する言葉なのだが、この言葉に沿って自分を知って自分を分けることを考えてみよう。
世界中が大きく変わってしまったいま、これまでのように人と同じようにしていれば至るところにいるのがいまの時代ではないか。
「敵を知り己を知れば百戦危うからず」と言うように、まず自分の分を弁えて、分相応に行動するとはどういうことかを考えていけば、チャンスは至るところにあることに気づくはずである。
横並びからいち早く脱してチャンスをつかんだ好例が、環境大臣を務め、内閣総理官房補佐から女性初の防衛相に就任した小池百合子氏だろう。
彼女は関西学院大学を中退してエジプトのカイロ大学文学部を卒業している。
その彼女にかつて「なぜエジプトの大学へ行ったの?」と尋ねたことがある。
彼女の答えはこういうものだった。
「英語を話す人はたくさんいます。
だけどアラビア語を話す人はごくわずかしかいませんね。
エジプトの大学でアラビア語を学ぶためには英語が必要です。
だから、アラビア語をそこからいったい何が読み取れるのか。
自分を知って自分を分けるとは、他人にはない自分の特質や特技を考えることではないか。
そうすればまず横並びから脱皮できるだろうし、学びながら英語も習得できますから」事実、彼女はアラビア語だけでなく英語も流暢である。
いま私たちに求められているのは、彼女のこういう発想なのである。
彼女がもう 年以上も前にそう考えたことがいまにつながっているのである。
逸早い横並びからの脱皮という発想はまことにたいしたものである。
人と同じように、やれ年金だ、格差だなどとただぼやいて騒いでいれば何とかなるような甘い時代ではとうの昔になくなった。
むしろ、一見、危機と思えるようなことを逆手にとってチャンスに変えるという考え方が求められているのである。
終身雇用で身分が守られた時代には、会社や国頼みでも何とか生きていけただろう。
しかし、いまは「自助」の時代。
自分の人生は自分で考え、切り開く時代なのである。
日本の借金残高は830兆円を超え、マスコミも「日本は借金大国。
赤ちゃんからお年寄りまで含めた国民一人当たりの借金は約653万円になる」などと喧伝する。
そんな報道が重なれば、何をやっても無意味だと自虐的になるのもわからないわけではない。
だが、物事にはコインのように必ず裏表がある。
国の借金残高の内訳を見ると、そのほとんどは国債だ。
国債を多く保有しているのは日銀や銀行など金融機関で、個人の保有比率は5%狸度だが、国民から見れば、それだけ国に貸しがあるということである。
一億総中流時代から二極化の時代へ内閣府が2006年末に公表した2005年度の実質GDP(刷内総生産)成長率は2.4%だった。
大企業の収益も、目まぐるしく好転し始めているし、株価もほどほどに頑張っている現状がGDPに反映され、高度成長期の「いざなぎ景気」を期間では抜いて最長の景気回復となった。
一方では「景気回復と言われたって実感がない」という声も強い。
家計の金融資産残高も2006年末で過去最高の1540兆円にもなる。
着実に国民の金融資産は増えている。
こんな富を持っている国民が、「借金大国だから、日本人は貧しい」などと自虐的になっている姿を外国人が見れば、「いったい何を考えているのか日本人は」と彼らのほうが頭を抱えるのではないか。
そうだろう。
家計をしっかり増やすことを考えれば、1%増えれば1兆円、5%なら5兆円にもなる。
何もせずにぼやくばかりが能ではあるまい。
しっかり自分にできることを考えることである。
いざなぎ景気時はGDPと株価は平行、今回は株価が大きく上昇当然である。
いまや日本の国の形が昔のそれとは大きく異なっているのである。
経済のあり方も昔と同じという訳にはいかない。
昔は名目成長率のほうが実質よりも大きく上回っていた。
いざなぎ景気の時は1ヵ月で123%、実質で、17%もの大幅な伸びとなり、賃上げや給料は名目成長率と関係が深いため、賃上げも月給の金額もそれ相応に増えていった。
インフレの進行のほうが速く、当時のサラリーマンは「賃上げでも実感がない」とぼやいていたものだ。
今回の景気は昔とは大きく背景が異なっている。
「いざなぎ景気」と回復の期間は同じでも、その間の実質成長率は17%、名目に至ってはたったの4%しか伸びていない。
500兆円のGDPがたった2兆円しか増えていないのだから、実感など求めるほうが無理というものだろう。
当然、その増えないパイの奪い合いとなる。
企業だって同じ業種でも自動車のようにトップと下位では大きな差がつく。
この現象は日本中に及び、中央の一部と地方、高齢者と若年層、大企業と中小企業、金持ちと金なしといった具合に景気側復の表れ方も大きく二つに分かれる。
いまの日本のGDPの成長に大きく寄与しているのは、好調なアメリカや中国であり、その恩恵を受けるのは大企業が中心で、中小企業や地方へはその好況がなかなか及ばない。
一方でデフレ現象はまだ続いているので、金持ちはますます豊かになる一方でサラリーマンの所得は伸び悩む。
バブル崩壊以来ずっとマイナスだったGDPの名目成長率が、やっとごく小さな数字ながらプラスに転じており、将来の雇用や給料に改善の期待も一部出てきつつあるので、いずれ消費が活性化してくればもう少しは明るくなるだろう。
そうは言ってもこの二極化への変化は将来も変わらないだろう。
チャンスを求め努力をし、リスクを取って資産や給料を増やそうとする人と、そうしない人との格差はますます広がるのは確かである。
「求めよ、さらば与えられん」の言葉通り、資産もじっと持っていれば増える時代ではない。
求めなければ得られない時代になったのである。
やっと日本経済も大きく転換し始める気配が出てきた折だけに、上に上がるためには自らも時代にマッチするべく変わることだ。
市場はしばしば実体経済を映す鏡にたとえられるが、株価の動きを見ると市場はもう日本の国の形が変わったことを映しているのではないだろうか。
いざなぎ景気の時はGDPの伸びと株価の伸びは平行に推移しているが、今回はそうなっていない。
この意味を是非しっかり考えてみてほしいのである。
2007年2月末に中国・上海発の相場の下げで世界中が大騒ぎになったことがある。
思わぬ春の嵐に見舞われ、身構えた人も多かったのではないか、世の中変われば変わるものだ。
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